飲んでよし、食べてよしの「酢」。えらびかたまとめ。

食べ物に酸味を加えるのはもちろん、保存性を高めたり、変色を防いだり、減塩効果もあるとされています。酢の歴史や種類、選び方についてまとめました。

<酢の歴史>~お酢は人類が作った最古の調味料

実は酢は古代エジプト時代から存在しており、かのクレオパトラも美容のために真珠を酢に溶かして飲んでいたとされています。古代バビロニアの記録によると、干しぶどうやナツメヤシを利用してお酢を造っていたとのこと。旧約聖書にも、酢は飲み物として登場しています。

興味深いことに、酢が身体に良いことを古代の人々も認識していたようです。ギリシャでは医学者のヒポクラテスが病み上がりの病人に酢を摂るようにすすめていたそうですし、中国でも周の時代には、漢方薬としてその効能が認められていたそうです。

日本で酢が造られるようになったのは、45世紀頃の事。中国から酒を造る技術とともに米酢の醸造技術が伝えられ、和泉の国(現在の大阪府南部)で造られるようになったのがはじまりと言われています。奈良時代には上流階級である朝廷や貴族の人々の間で漢方の一種・薬・高級調味料として用いられており、庶民には流通していませんでした。

酢が調味料として一般に広まったのは、江戸時代になってからです。お酢の製法が全国各地に広まり、それとともにお酢をつかった料理がたくさん生まれました。この頃に生まれたお酢を使った代表的な料理が「お寿司」です。(醤油も江戸時代に庶民へと普及しました)

大正時代に入ると「合成酢」が登場します。これは石油や石灰石を原料とした氷酢酸を薄め、数種類の食品添加物を加えたものです。戦中・戦後の食糧難の時代には、米を原料として酢を造ることが禁止されていたため、一時は市場の大部分をこの合成酢が占めていました。

昭和45年に表示の義務が変わり氷酢酸を少しでも使ったのもには「合成酢」の表示が義務づけられるようになりました。今では醸造酢の生産が合成酢を上回るようになり、市場に流通している酢のほとんどが醸造酢になっています。

 

酢のつくりかた

世界にはなんと4000種類もの酢があると言われており、お酒が作られている地域では酢が作られています。様々にある酢の種類はまた今度記載するとして、こちらでは日本で使用される代表的な醸造酢「米酢」の昔ながらの作り方をご紹介します。

1)原料である白米もしくは玄米を大きな樽で蒸す。

2)蒸した米に麹菌をふりかけ、こうじ室に運び米麹を作る。

3)米麹・水・お米を樽の中に入れアルコール発酵させる。

4)アルコール発酵させた液体に種酢を入れ、酢酸発酵をさせる。※種酢とは、酢酸菌または発酵の終わったもろみの一部です。秘伝のたれの継ぎ足しの要領で、すでに出来上がっている酢を入れることもあります。

5)樽の中を40度に保ち、ゆっくりと時間をかけて熟成させる。※熟成期間はメーカーや商品によって異なります。3ヶ月程度から、1年半もかけて熟成させるものもあります。

6)熟成している期間、桶を換えながら酢を外気に触れさせ酸素と混合させる(オリ引き)。

7)酢のもろみをろ過し、不純物を取り除く。

8)お酢の発酵を止めるため、7080度に加熱する。

 

つくりかたからみた酢の種類

伝統的な作り方は上にまとめましたが、酢は原料の違いからから「醸造酢」「合成酢」に大きく分けられます。

醸造酢

米や果物など、農作物を原料としている酢。穀物を原料として作られている場合、その使用総量は醸造酢1リットルにつき40g以上と決められています。果実を原料として作られているも小野は、その使用総量が醸造酢1リットルにつき果実の搾汁として300g以上と規定されています。穀類・果実と酵母の発酵の力で作られた酢もあれば、発酵を早めるためにアルコールが使われている酢も含まれます。

合成酢

氷酢酸や酢酸を水で薄め砂糖や酸味料、うま味調味料などを加えて人工的に作った調味料。物が不足していた時代にたくさん出回っていました。醸造酢か合成酢かは商品のラベル表示で確認ができます。

 

また、酢酸発酵のさせかたついては、「静置発酵」「全面発酵」に分けられます。

静置発酵法

タンクの表面の酢酸菌がゆっくり時間をかけて自然にアルコール分を酢にかえていく発酵法です。発酵期間最低でも3ヶ月以上。自然の流れに任せて発酵させるため、時間と手間に加えて職人の勘が必要ですが、醸造している間に酢酸と水が調和し、 まろやかで旨味の多いお酢を造ることができます。

全面発酵(連続発酵)法

タンク内に空気を送り込み、攪拌して細かい泡を作ります。泡の作用で空気と接する面積を増やすことで、発酵を人工的に早く進める製造手法です。発酵期間が短い分、すっきりとした淡白な味が特徴です。短期間に大量のお酢が作れることから市場に流通している安価なお酢はほとんどこの製法で作られています。酢酸菌は空気に触れる面で発酵します。そのため「静置発酵」では液面でしか発酵が進まないのに対し、 液体内に空気を送り込む「全面発酵」では全体で発酵が進むため、わずか1日で発酵を終えるような酢もあります。

また、全面発酵で作られた酢は1ヶ月程度の熟成期間しか経ずに出荷されているものも多いです。

 

「純」が付いているお酢は?

酢を作るのに使われた米などの多さによって「米酢」ではなく「純米酢」と表記ができます。

純米酢・純玄米酢・純りんご酢など、スーパーなどで「純●●酢」と記載されているものとつかないものの違いは、原料にプラスしてアルコールが加えられているかいないかの違いです。純のつく方がアルコールを加えていないものです。原料にアルコールを加えると、製造にかかる日数を抑えることもできるのですが、お酢に含まれる色々な有効成分を活かすのであれば、原料だけで作られたものの方が良いでしょう。

ちなみに、醸造酢での米の使用量は酢1リットルにつき40g以上と記載しましたが、純米酢には酢1リットルにつき200g以上もの米が含まれていることがほとんどです。

 

身体に良い酢のえらびかた

酢は米、穀物、果物など様々なもので作られているため、味も種類も様々。そのため好み、また作りたい料理によって酢の種類を選ばれることも多いかと思いますが、健康を考えた酢のえらびかたに絞って記載します。いくつかキーワードとしてピックアップしますが、これらを兼ね備えているお酢ほど、健康効果があると考えられます。

醸造酢であること

原料が穀類や果実など天然のものであるからこそ、醸造酢には、合成酢に比べてグルコン酸など、酢酸以外の有機酸がはるかに多く含まれていることが分かっています。有機酸のほとんどは体内でクエン酸に変化し、疲労回復や食欲増進などの健康効果をもたらしてくれます。最近では市場に出回るほとんどの酢が醸造酢になっています。

時間をかけて発酵・熟成されていること

静置発酵法でじっくりと発酵を行い、熟成させた酢は味の尖りがなく、まろやかで奥深い味わいです。これは酢に酢酸やクエン酸、グルコン酸などの有機酸が多く含まれているためです。全面発酵法で作られたお酢はすっきりとした酸味がありますが、まろやかさは静置発酵法のものに比べて劣リます。これは有機酸の含有量の違いではないかと考えられます。

「純」の表記があること

原料に含まれている色々ないい成分を活かすのであれば、原料だけで作られたものの方が良いです。また、純の表記がある方がお酢1リットルにつき含まれている原料が多い為、有機酸の含有量が増え、健康という観点では良いでしょう。

素材が無農薬・有機栽培などで作られていること

素材にこだわられている酢は製造方法にもこだわり抜かれていることが多い為、一つの目安になります。また、農薬の使用に伴い作物の栄養価の減少や農薬によるとされる健康被害も問題になりますので、より栄養価の高い安全な酢を選ぶことができるかと思います。

 


いかがでしたでしょうか。大きなメーカーが昔ながらの製造方法で生産を行っているというわけでもありません。小さくても伝統的な製法を守りつつお酢作りを続けているメーカーもあります。酢は古くから食物の保存にも使われていました。それぐらい酢には殺菌効果があり、酢そのものが腐ることはほぼありません。米酢や穀物酢など混ぜ物をしていない酢だけの場合は、冷蔵庫に入れる必要はなく冷暗所においておくだけでかまいません。

こちらの記事と合わせて様々な酢の種類についてまとめた記事も今後ご紹介しますので、お気に入りの酢を見つけてみてくださいね!

ABOUTこの記事をかいた人

2人のこどもを育てながらネット求人企業ではたらくワーキングマザー。週末発酵教室。栄養医学指導師。今日からすぐに始められるからだに優しい食べ物の選び方や簡単レシピなどを紹介していきます。