スーパーで売られているものには偽物も⁉︎ 醤油のえらびかた。

食卓には欠かせない「醤油」。毎日食べるものだからこそ、ちゃんとしたものを選びたいなと思います。栄養面や醤油の歴史、えらびかたをまとめました。

<醤油の栄養> 美容にも良い調味料。

納豆や味噌といった発酵食品はなんとなく身体に良さそう、というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、醤油も立派な発酵食品。微生物の力を借りて熟成させることで、旨みや風味はもちろん、保存性も高まり、また豊富な栄養を含んでいます。

醤油には、味噌と同様に血圧を下げたり、糖尿病やガンを予防する効果があるという研究結果が出ています。伝統的な製法でつくられた醤油には多くの栄養素とともに優良な微生物・麹菌が存在しており、私たちの生命活動に欠かせない物質を作ってくれています。人間が自ら作り出すことができないアミノ酸(必須アミノ酸)も9種類すべて含まれています。

また、醤油には赤ワインやビタミンCなどをはるかに上回る抗酸化作用が含まれていて、美容や老化というアンチエイジングにも良い効果があるようです。

ちなみに、発酵とは酵母や細菌などの微生物が有機化合物を分解して乳酸,アルコールなどを生成し、人体に有益な作用のことを言います。腐敗とは微生物が有機化合物を分解して硫化水素やアンモニアを生成し、人体に有害な作用のことを言います。(広い意味で言うと、人が食べられるものとそうでないものとでいい方が変わるだけで、微生物の働きは同じです)

醤油の起源は味噌と同じ。

昔から人類は食べ物を保存する時に塩を使っていました。

醤油は味噌から派生したもので、味噌の起源は醤(ひしお)。これは紀元前の中国で生まれたもので、魚や肉、野菜、穀物を塩漬けにして保存をした時にできた液体のことを指していました。それらの液体は魚醤、肉醤、草醤、穀醤とそれぞれ呼ばれていたそうで、穀醤が味噌や醤油の原型になっています。

また鎌倉時代に現在の和歌山県湯浅のお寺の僧侶、覚心が中国から味噌の作り方を持ち帰ってきて(径山寺味噌)作り方を広めました。味噌を作っている過程で偶然できた液体が醤油の始まりと言われています。
醤油は関西を中心として作られていましたが、江戸時代ともなると水運を利用して江戸に早く運ぶことができるようになったため、この頃から千葉などで積極的に作られるようになりました。千葉県に大手の醤油メーカーの工場があるはこのためです。

また、江戸時代には寿司や蒲焼という日本ならではの料理が完成しました。そのため、醤油は庶民の食文化に欠かせないものとなり、急速に広まることになりました。
第二次世界大戦後は技術革新、大規模工場開発などで機械化が進み、昔よりもコストをかけずに作れるようになっています。

昔から続く醤油と、大量生産されている醤油のつくりかたには大きな違いがある。

醤油には地域によって様々な種類があります。それについては別に記載するとして、一般的な醤油の作り方と大量生産型の醤油の違いをまとめました。

昔ながらの基本の醤油の作り方

1)一晩水に浸した後蒸した大豆に製粉していない小麦(炒ったもの)を混ぜ合わせ、種麹を加えて発酵させ、醤油麹を作る。
2)醤油麹に食塩水を混ぜ、「もろみ」を作る。
3)もろみを木桶に入れて熟成させる(半年から2年程度)
4)熟成されたもろみを絞って出来上がり。

もろみを絞っただけで加熱をしていない醤油を「生醤油」といい、生醤油に火入れ(加熱)処理すると一般的に販売されている醤油が完成します。

醤油は作り方で大きく3つに分けられます。

本醸造方式

本醸造とは、醤油の旨みを大豆や小麦から醸造によって作り出した醤油。醸造とは微生物が発酵を行うことで食品を製造することなので、上記にも説明されている昔ながらのやり方に近いと言えます。流通している80%は本醸造方式の醤油です。

混合醸造方式

本醸造方式でできた「もろみ」にアミノ酸液を加え、短期間で熟成してできた生醤油に火入れをした醤油。

混合方式

本醸造方式または混合醸造方式でできた生醤油にアミノ酸液を加え、火入れ処理をした醤油。

混合醸造方式や混合方式で作られた製品。実際に1本300円などでスーパーでよく売られています。

醤油は本来木桶で半年以上の熟成期間を経ることで、微生物たちが発酵を行ないますが、昔ながらの製造方法では生産量が限られ、またコストがかかります。そのため、製造の過程でアミノ酸液を加えて早く醸造させることで生産コストを減らす方法がとられています。

また、アミノ酸液の代わりに酵素剤を入れる場合もあります。これが入っている場合は、製品表示に「天然」「生」等の用語を利用することができませんので一つの目安になります。ただ、酵素剤を加えたとしてもアミノ酸液を加えていなければ「本醸造」と明記できてしまいます。

ちなみに、JAS法によると、アミノ酸液の使用量は窒素換算で80%以下とされています。つまり、容量のうちアミノ酸液が80%だったとしても醤油として販売が可能です。

>>>醤油風調味料に入っているものとは?

料理を美味しくし、身体にも嬉しい醤油のえらびかた。

とはいえ地域によっても異なる文化のある醤油。特に九州地方などでは甘みのある醤油が好まれて作られているため、アミノ酸液が入った醤油が一概に良くない、とは言い切れませんが、醤油本来の風味を味わうことや、発酵食品としての醤油そのものの健康効果を得るということを目的とする、という観点でいくつかえらび方に関するキーワードを集めてみました。

・本醸造のものを選ぶ

・脱脂加工大豆ではなく、丸大豆から作られている醤油を選ぶ

脱脂加工大豆は大豆から油を取り除いたもの。近年大豆油は工業用にもたくさん使用されており、残った脱脂加工大豆を醤油の原料とするのはエコな利用法ではあります。また旨みが出やすいとも言われています。

ただ、大豆油の抽出には一般的にヘキサンという薬剤が使われています。製造過程で中和され問題がないという理由から、ラベルには表示されていません。しかしヘキサン処理をされた油は酸化が早く、また摂取したい抗酸化物質が除去されていることが多いようです。

また大豆も国産・無農薬・有機農法の大豆や塩も化学的に精製された精製塩ではなく天日塩で作られている醤油の方が大豆の栄養価や海水のミネラルを含んだ醤油となります。

・天然醸造の表記があるものを選ぶ

天然醸造とは昔ながらの季節の温度変化によって醸造する方法で、冬の寒い時期に仕込みをし、翌年の秋から冬にかけて熟成させます。仕込みからしぼるまでが約1年かかるため市販の安い醤油より値段はしますが、栄養も豊富で醤油本来の風味やコクを味わうことができます。

・旨みから選ぶ

JASマークの付いている醤油には「標準」「上級」「特級」「特選」「超特選」のいずれかの表示がしてあります。それぞれの違いは、「うま味」の指標といわれている、窒素分」 の含量や色度(色の濃淡)などで決まっています。(JASに加盟していない醤油にはこの表記がありません)

・添加物の入っていないものを選ぶ

本来の醤油は大豆・塩・麹・小麦のみで作られているので、それ以外は入っていないものの方が安心です。


いかがでしたでしょうか。毎日使う調味料だからこそ、本当に美味しい醤油・自分好みの醤油を見つけていただければと思います。本物の醤油を使って作る煮物は格別ですよ。醤油は開封すると酸化が進み風味・味・栄養面でも低下していくため、冷蔵庫や冷暗所で保存してくださいね

ABOUTこの記事をかいた人

2人のこどもを育てながらネット求人企業ではたらくワーキングマザー。週末発酵教室。栄養医学指導師。今日からすぐに始められるからだに優しい食べ物の選び方や簡単レシピなどを紹介していきます。